ダッシュ10分前にしか起きれない自分に腹が立ち、裸足でダイニングの床を2、3歩進み無意識にリモコンを握り即座にTVをつけたのだが、大学生活を共にした小さめのブラウン管が、私の部屋にあった大きめのスピーカーと最近接続された事に気付き、即萎えた。聞きたくもない情報がいちいちステレオで拡声され、私も覚醒されるなんて冗談めいた事を考えるまでもなく、世間のぬるっこい井戸端データが私の逃避願望を刺激する。早く行けよのこのこ行けよ、とアナログ不可逆変換された忌々しい目覚まし君と目覚ましさんの清々しいっぽい声。今日のわんこが、今日の●んこにしか聞こえない午前7時50分。犬を囲む暇があるのかぇ?なんて文句言う暇はないが、独り妙に怒り顔造っても、誰一人私の顔を見てはいない。私は安心か不満かどっちかの感情を抱いたと思う。たぶん二つが入り混じった、説明し難い私っぽい感情なのだろうと今は理解している通勤ラッシュの電車の中。私の前に雪崩れ込んだ親父の背がとにかくでかいのは何かを象徴しているように思えてならない。あ、こりゃ確かに背広ですぞ、あはは。っておいおい。しかし私の後ろに押し込まれた女性の胸のガードったらないね。そりゃ人塵に揉みくちゃにされる車内であるからして、手をこう胸の前で交差する所作は、自己防衛本能の表れとしてスタンダードな形だとも思うけれども、どうせ守るならC以上にして欲しいと切に願った梅田から淀屋橋の一駅間であります。C未満の防衛軍を見ると腹立たしくなるのは私だけでしょうかアンケートを私は即座に隣の暑苦しそうな禿眼鏡にとってみる。「こいつ、C未満なのに防衛してますよ」「・・・え?」「この人見て下さい」「あ、さっちゃん」「あら、お父さん」「なんださっちゃんか」「お父さん、この人、私の交差した自己防衛の両手を、舌でぺろぺろ舐めてくるんですよ」「なに?」「え?」「ほんとか君」「え?」「ほんとか君」「ええほんとです、こうなりゃこうやって」「あ、おい君、やめろ」「優先席付近では携帯電話の電源をお切り下さい」「お父さん、助けて」「君、やめなさい」「それ以外の場所では、」「君!」「マナーモードに設定の上、」「お父さん! べとつくわ!」「通話は」「舐めるなら、私の腕を!!」「お控えください。」「・・・」「ご協力をお願い致します」・・・すみませんすみませんすすみません!!、と人の流れが急激になりああ淀屋橋に着いたよと神の声。娘の両腕は私の唾液でぐちゃぐちゃになっており、それを丁寧に駅構内で瞬時に拭き取る禿眼鏡がポケットから出したティッシュは、西中のセッキャバのやつで、私が先週路上で指揮者の如く1200個ばかり配ったものだから内容を熟知していた。コギャルセーラー服部隊、オールタイム5000円ポッキリ。ふーん。不思議と感極まった私(最近特にもろい)は、結局その場所、白線の内側に佇み、逃げるように地下鉄に乗り込んだ禿親父と腕娘に対し、30秒ほど手を振り続け、すぐに飽きた。