演劇オフ会計画

▼先日行われた関西演劇サミット2008がすこぶって面白かった。その報告をせねばという思いに駆られた。00年代、90年代、80年代(以前)の三区分で代表者が2〜3名登場、それぞれ2時間ずつお話をするという会。最初の冒頭20分ぐらいで、その年代の社会的事件と演劇的事件を紹介。その後、各パネリストの自己紹介をしていく形で、今の演劇界に関しての諸々を発表した。パネリストには事前に16の質問事項が与えられていた。その質問16個がとても良いと思うので、ここに載せてみます。パンフレットにも掲載されたものだから、たぶんOKでしょう。

質問事項
Q1|演劇を始めた年と、きっかけを教えてください
Q2|現在まで演劇活動を続けてこられた理由は何だと思いますか
Q3|影響を受けたアーティスト、あるいは作品(舞台芸術に限らず)と、その理由を教えてください(始
めた当時、転機の時、最近など、時期は問いません)
Q4|同世代で気になっている演劇人(国内外問わず)と、その理由を教えてください
Q5|異世代で気になっている演劇人(国内外問わず)と、その理由を教えてください
Q6|ご自身の作品が他と異なっているのはどんな点だと思いますか

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Q7|舞台芸術作品の“いいところ”と“不利なところ”は何だと思いますか
Q8|現在の関西小劇場の状況について、“いい面”と“悪い面”は何だと思いますか
Q9|10 年前にあって現在はないもの(こと)、10 年前にはなくて現在はあるもの(こと)は何ですか(舞
台芸術の創作に関わるもの(こと)、具体/抽象、直接/間接問わず)
Q10|上の世代が“うらやましい”と思うこと、逆にその世代でなくてよかったと思うことは何ですか
Q11|下の世代が“うらやましい”と思うこと、逆にその世代でなくてよかったと思うことは何ですか
Q12|上の世代/下の世代に言いたいこと、提案などがあれば
Q13|現在の関西小劇場に足りないもの(こと)は何だと思いますか
Q14|3 年後/5 年後/10 年後の目標(劇団/個人問わず、野望、妄想で結構です)を教えてください
Q15|3 年後/5 年後/10 年後の精華小劇場の理想の姿はどんなですか
Q16|その他、議論したい内容があれば

▼こういった質問から見えてくる事は、「演劇」について一生懸命考えている人たちがいるんだよって構図と、「演劇」やってるんだったら「演劇」を少しでも幸せにしてみませんか? 現状どうですか?っていう純粋無垢な投げかけである。この投げかけの部分をもっと宣伝出来ればサミットはもっと盛り上がっただろう。参加者の一名のHさんも言っていたが、「別に演劇サミットという名前じゃなくっても十分面白いやん」である。確かに面白かった。僕としてはそれぞれの年代の差異がとても良く表れていたんじゃないかと思う。00年代は益山氏(子供巨人)、安武氏(トイ・ガーデン)と僕である。三人とも共通して山の存在を求めた。つまり、かっこいい大人とか、オピニオン・リーダーといった存在を希求している。(安武君はちょっと違ったかも。彼の意見はニコ中らしく、とっても愛苦しい感じだ。演劇=オフ会と言って見せたのは彼である。ちなみに益山君は演劇を「法事」に譬えていた。これは、平田オリザ氏が言う所の「緩やかなネットワーク」だろう。出会いの場としての舞台芸術鑑賞体験を三人とも同じように提唱していたのは興味深かった。)また、競争原理の導入や演劇の裾野の広げ方といった考え方も00年代の話でされた。

▼一方90年代では、人と人の繋がりといった部分がクローズアップされていたように思う。三人とも「先輩の背中がしっかりと見えていた」と発言していた。そういった空気はA級の土橋さんの「演劇に恩返しがしたい」といった言葉に集約される。この言葉だけ取ると、土橋さんがめちゃくちゃ偉そうに見えるけれど、全くそうじゃなくって、彼自身も勿論その辺の事は判りながら、「演劇への恩返し」と言う言葉を使われていた。とても印象に残るフレーズだった。

▼また80年代以前では、dBの大谷さんと遊劇体のキタモトさんがパネリストとして参加していた。大谷さんのお話は、大変示唆的な部分が多くて、00年代のお話を面白がってくれてとても嬉しかった。僕はとある先輩の影響でdBに初めて行った時から、喫茶店付きのdBを素晴らしい場所だ、ヨーロッパだ!と感動していたのだけれど、実際の大谷さんも実に素敵な人でヨーロッパやアメリカのアーツ・マネイジメント事例を出しながら、今の関西状況を語っておられて、とても勉強になりました。また、キタモトさんのお話は、00年代の父性の喪失といった事を考えさせられた。キタモトさんが演劇を始められたきっかけを長くお話されていたのだけれど、それがめちゃくちゃ面白く、こういった先輩の演劇史を直接聞けるのはとても嬉しい。それに、キタモトさんが今の演劇状況の幸福さを語りながら、若手へ少し喝を入れるような言葉、つまり今の演劇人は幸せすぎるのかもしれない。昔は自分たちで全てをやっていた。といった言葉も、実際いつもの僕なら、過去を懐かしんだって、世界的に見て演劇インフラは全然配備されていないので、、、とか思うのだけれど、この時ばかりは公の状況ではっきりした言葉で語ってくれているキタモトさんの姿に演劇への揺るぎない愛やエネルギーを感じて感動した。

▼といった感じで、実に盛り上がっていたサミットであったのだが、お客さんの数が驚くほど少なかった。これは、宣伝ができていなかった面もあるにしても、大阪の演劇人の姿などちっとも見当たらなかったのは、どうなのか。実際、うちのメンバーも全然来ていなくって、個人的に自分とこのメンバーも連れてこれないで、という思いがあるので、次の日の会議ではこういったサミットがあった場合半強制的に参加させます。と宣言しようと思った。しかし、来ない事を嘆いてばかりいても始まらないので、どうにかしてこういった貴重な場があった事を知ってもらう必要はあるし、継続的にこういった場を提供し続ける事も必要だろう。コレを見ても思うのだけれど、公的にオープンなサロンの必要性が唱えられるべきだと思う。