東京へ

▼先ほど大阪での最後の稽古を終えた。今回、美術・舞台監督とも自分たちの集団内で賄うので、まぁ当然の事っちゃ事なんだけど、本当に私たちは舞台音痴なので、まったくもって不安でいっぱいだ。こんなことで東京へ向かうなんて、非常識も甚だしい。図面と定規を何度眺めただろうか。こんなことは初めてだ。中学生時代、「技術」といった授業があって、図面どおりにアルミのゴミ箱を作るってのがあったが、私は隣の人のアルミを鋏で切ったりして遊んでいた。きれいな丸いゴミ箱を作らなければならないのに、そのためにアルミの板を鉄の細めの槌でちょっとずつなぐって折り曲げなくてはならないのに、私と私の友達たちは、隣の子のアルミの板を思いっきりボコボコ殴っていた。そして先生にこっぴどく叱られた。ってぐらい「技術」に疎い。そのくせ将来は自分で建てた家に住みたいと思っている。(と書くと私がいじめっ子みたいだけれど、ぜんぜん違います。いちゃつく遊びがはやっていたのだ。もちろん、私のアルミのゴミ箱もちっとも丸くなかった。ギザギザのゴミ箱だ。)

▼大学2年生の9月に、確か初めて一人で東京へ向かった。私は、その当時富士山の山小屋で1ヶ月半ほど篭って金を貯めていた。実際は、その当時付き合っていた女性とうまくいかなくなって、悟りを開こうと思って山小屋へ行った。私は山小屋へ行く前に、「山ではアコーディオンを弾きながらエーデルワイスを歌いたい」といった夢想をしていたが、私が働きにいった山小屋の倉庫に、信じられないことに、本当にアコーディオンが眠っていた。それに気づいたのは働き初めて3週間程したとき、みんなで小屋の倉庫の掃除をしようってことで、掃除をしたらアコーディオンが出てきたのだ。私は神の啓示と思い込み、実際に朝起きて、もろもろ仕事をこなした後、一人アコーディオンを持って道の外れに座り込み、エーデルワイスを歌っていた。小屋のおじさんは、「もっと歌えもっと歌え、上手だな君」とか朝から酔っ払いながらいってきたけど、私はすぐ止めた。やっぱり恥ずかしいのだ。

▼で、まぁその女性とはあまりうまくいかなくなって、富士山頂で、唯一ウィルコムの電波が通じる岩があって、その上で電話をしていた時に振られたのだけれど、その腹いせにというか、思わず我を忘れて貯めたお金で持って東京は歌舞伎町、あらゆる性風俗に勤しもうと頑張った記憶が東京にはあるってなんだそりゃ。あ、あとタバコと塩の博物館にもいった。あの当時世界のタバコに興味があったのだ。確かあそこでメンソールの液と嗅ぎタバコを買った。嗅ぎタバコは、何かとっても悪いことをしてるような感覚になって面白かった。

▼とにかく今から東京へ行く。私だけ早入りだ。ほかのメンバーは明日の深夜バスに乗ってくる。