これは演劇じゃない?!

▼お蔭様で何とかC.T.T. vol.69が終了した。私たちの作品は『貝を棒でRMX』。これは、自分たちの作品を気侭に解し何が立ち上がってくるのかを見てみたかったので行った実験的な色味が強い作品になる。台本に使用したテキストは、こちら。全文掲載しておりますので、よろしければご確認下さい。テキスト自体は何ら面白くも何とも無いとは思いますが、物好きは是非。能動的な脳内モンタージュによる幻像捜索/創作をして下さい。

▼『貝を棒でRMX』は古川日出男作『中国行きのスローボートRMX』からインスピレーションを得たものだ。元来の作品をRMXする事で立ち上がる幻像を見たいがためにやってみた。前半は自宅でRMXした23章のソネットの朗読。後半は128個のセリフをリアルタイムRMXして、私がカントールよろしく(合評会での丸井氏の発言より私なりに曲解引用)、役者にアドリブでセリフを言わしめていく、といったものだった。

▼で、初日の公演でちょっとした事件が起こった。会場に来ていた一人のお客様が、私たちの公演の終幕寸前、声を大にしてこう叫んだのだ。

「これは、演劇じゃない。もうやめなさい!」

こんな体験はなかなか出切るものではない。今は21世紀だが、これは完全に3、40年前にテントで叫ばれていただろう言葉だ(と思い込んでいる)。それを浴びせられた事が衝撃であり、こんな言い方をすると誤解を招きかねないが、ある意味に於いてこれはとても感動的だった。その時私たちは、「また立った」「迷わず行けよ行けば判るさ」「おせんち」「ソウルマン」の四つの言葉をRMXして大合唱していたのであるが、まぁ確かに下品であるし馬鹿な姿勢であり、「これは演劇です」、と満を持して言う事も出来ないかもしれない。受け手の反応としても大きく真っ二つに分かれていた。その年配の女性の方の中止しろ発言を仕込だと想い笑う方と、恐々としてしまう方と。私はその女性の方と「何が演劇であるのか」を徹底的に話し合いたかった。C.T.T.は公演後に合評会があり、そこでお客様も自由に意見を述べる機会があるのだが、残念ながらその方は終演後帰られてしまった。

▼合評会では、もちろんこの話題が出た。そして観客の中から以下のような意見が出た。

「確かに下品だが、これも人間じゃないか」

その他に、こうした御意見も。
「セクシャルな言葉はどうでもよく、即興で指揮をして演出をするという方法論の方が面白い」

▼合評会で不覚にも私は胸を熱くした。少なくとも何らかの人間像を創出出来た事をお客様の意見より確認出来たからである。しかも私たちより世代が上の年配の方より頂いたご意見である。「これも人間じゃないか」に寄り掛かり過ぎてはいけないが、とても嬉しいご意見であった事は事実。「これも人間じゃないか」と「これは、演劇じゃない」との狭間に佇みながら、色んなことを考えていきたいと心底想った。

▼終演後、いきつけのインアワタイムへ。永見と本條の誕生日を祝ったのだ。チョコとモンブランとショートケーキとナッツ系のものと、4種類のケーキが切りそろえられて丸く一つになったケーキを食べた。